「制作会社に依頼してECサイトを新規構築する際、プロジェクトをどう進めればいいのか」を知りたい方に向けた記事です。
結論から言うと、構築プロジェクトは要件定義書の確定、WBSによるスケジュール管理、定例での進捗確認、受け入れテスト(UAT)という流れで進めると、認識齟齬や手戻りを防ぎながら着実に公開までたどり着けます。
この記事では、外部の制作会社と一緒にECサイトを新規構築する際の、プロジェクト進行の実務的な進め方を解説します。
結論:構築プロジェクトは4つの型で進める
ECサイトの新規構築は、発注して終わりではなく、発注側にも一定のプロジェクト管理の役割が求められます。
「要件定義書の確定」「WBSによるスケジュール管理」「定例での進捗確認」「受け入れテスト」という4つの型を押さえておくことで、制作会社に任せきりにせず、着実にプロジェクトを推進できます。
この記事を読むことで、構築プロジェクトを発注側としてどう進行管理すればよいかが具体的に分かります。
実際の現場でよくあるつまずきポイントも含めて丁寧に解説していきます。
「発注したら制作会社にすべて任せておけばよい」と考えてしまうと、公開直前になって認識のズレが表面化し、大きな手戻りにつながることがあります。
発注者側にも一定の関与が求められるという前提を持って、プロジェクトに臨むことが成功の第一歩です。
特に初めてEC構築プロジェクトを担当する方は、何をどこまで自社で確認すべきか分からず不安に感じることも多いはずです。この記事を、実践的なチェックポイントとしてぜひ活用してください。
なお、立ち上げ全体のフェーズや、着手前の準備については、それぞれ別記事で詳しく解説しています。この記事では、制作会社に発注した後の構築プロジェクトの進め方に絞って解説します。
要件定義書を発注前に確定させる
構築プロジェクトが始まる前に、要件定義書の内容を発注者・制作会社の双方で確定させておくことが、プロジェクト全体の土台になります。
- 掲載する商品点数とカテゴリ構成
- 決済方法・配送方法の種類
- 会員機能や外部システムとの連携要否
- デザインの方向性(参考サイト、トンマナ)
- 希望する公開日とマイルストーン
要件定義書が曖昧なまま契約・着手してしまうと、後から「これも入っていると思っていた」という認識齟齬が発生し、追加費用や納期遅延の原因になります。
見積もりの前提となった要件定義書は、契約書とあわせて双方で保管し、いつでも参照できるようにしておきましょう。
要件定義書のレビューは、発注者側の担当者一人だけで行うのではなく、実際にサイトを運用する部署(カスタマー対応、物流、マーケティングなど)にも確認してもらうと、運用開始後に困る仕様漏れを事前に防げます。
特に決済方法や配送方法の選択肢は、運用現場の意見を反映しておくことで、公開後の手戻りをぐっと大きく減らせます。
要件定義書は変更管理のベースになる
構築が進む中で仕様変更が発生すること自体は珍しくありません。
重要なのは、変更が発生した際に「当初の要件定義書からの差分」として明確に記録し、追加費用や納期への影響を都度確認しながら進めることです。
変更依頼が口頭やチャットでのやり取りだけで進んでしまうと、後になって「言った・言わない」のトラブルに発展しやすくなります。
変更内容、理由、影響範囲(費用・納期)を簡単な様式でまとめ、双方がきちんと確認した記録として残しておくことをおすすめします。
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要件定義書が固まったら、制作会社にWBS(作業分解構成図)を作成してもらい、各工程の担当者と期限を可視化します。
| 工程 | 期間を見積もる主な条件 |
|---|---|
| デザイン設計 | 画面数、デザイン案と修正回数、承認に必要な日数 |
| 商品登録・データ移行 | 商品点数、元データの整理、移行方法と確認範囲 |
| 決済・配送設定 | 決済審査、配送ルール、外部サービスとの接続条件 |
| 公開前テスト | テスト項目、対象端末、不具合修正と再確認の範囲 |
WBSがあることで、どの工程が遅延するとスケジュール全体にどう影響するかが分かりやすくなり、リスクの早期発見につながります。
全体の最短完了日を決める一連の作業経路を「クリティカルパス」と呼びます。各工程の依存関係と余裕日数を整理し、遅延が公開日に直結する作業を制作会社と確認しておきましょう。
たとえば画面実装がデザイン承認を待つ場合、その確認待ちが後工程に影響します。一方で、商品情報の整理など並行できる作業もあるため、工程の期間を単純に足すだけで納期を決めないことが大切です。
デザイン確認が長引くと、その承認に依存する作業が遅れることがあります。レビューの担当者、回答期限、修正回数の扱いを事前に決めておくと、進行を管理しやすくなります。
自社側のタスクも忘れずに組み込む
商品情報の提供、写真素材の準備、原稿のチェックなど、発注者側で対応すべきタスクもすべてWBSに組み込んでおくことが重要です。
制作会社の作業だけをWBSに載せてしまうと、発注者側の対応遅れがスケジュール全体のボトルネックになっていることに気づきにくくなります。
商品数が多い場合、商品情報の準備は想像以上に時間がかかる作業です。撮影・採寸・原稿作成を並行して進められる体制を、できるだけ社内で早めに整えておくことをおすすめします。
自社の対応が遅れることで、せっかく順調に進んでいた制作会社側の作業まで止まってしまうケースは、実際のプロジェクトで非常によく見られます。日頃から意識しておきましょう。
外注する前に確認しておきたいポイントは、ECサイト制作を外注する際の注意点でチェックリストとしてまとめています。
あわせて読みたい ECサイト制作を外注する際の注意点|失敗を防ぐチェックリスト ECサイト制作を外注する前に注意点を知りたい方に向けて、契約前・契約時・制作中・公開後という4つの段階で確認すべきポイントを、実際に使えるチェックリスト形式でできるだけくわしく丁寧… 記事を読む定例ミーティングで進捗を確認する
構築期間中は、週次または隔週での定例ミーティングを設定し、進捗状況と課題を共有する場を持つことをおすすめします。
定例では、完了したタスク、今週の作業予定、発生している課題や懸念事項を確認します。
課題が小さいうちに共有できれば、大きな手戻りになる前に軌道修正できます。
定例の議事録は、決定事項と担当者、期限を明記して残しておくことをおすすめします。
口頭でのやり取りだけで終わらせてしまうと、後になって「言った・言わない」の水掛け論になりやすいため、簡単な形式でよいので記録を残す習慣をつけましょう。
議事録は凝った書式で作る必要はなく、日付・出席者・決定事項・次回までのタスクを簡潔に箇条書きでまとめる程度で十分機能します。
定例ミーティングを「報告を聞くだけの場」にしてしまうと、課題の発見が遅れがちです。発注者側からも積極的に質問し、実際の画面や進捗物を見せてもらいながら確認する姿勢が大切です。
依頼先選びでよくある失敗と防ぎ方は、ECサイト制作会社選びの失敗事例で紹介しています。
あわせて読みたい ECサイト制作会社選びの失敗事例5選|原因と防ぎ方 ECサイト制作会社選びで失敗したくない方に向けて、業界でよく語られる失敗パターンを5つのケースとして紹介し、それぞれの原因と具体的な防ぎ方を実務目線でできるだけくわしく丁寧に解説し… 記事を読む受け入れテスト(UAT)で最終確認する
構築が完了したら、公開前に発注者側で実際にサイトを操作し、要件定義書どおりに仕上がっているかを確認する受け入れテストを行います。
- 実際に商品を購入する一連の流れ(決済含む)
- スマートフォン・タブレットでの表示確認
- 問い合わせフォーム・会員登録の動作確認
- 特定商取引法表記など法的要件の最終確認
受け入れテストで見つかった不具合や要望は、リスト化して制作会社に共有し、対応の優先順位と修正期限を合意したうえで公開に臨みましょう。
受け入れテストは、担当者一人だけでなく、可能であれば複数名で実施することをおすすめします。人によって見る観点が異なるため、一人では気づけない不具合を発見できることがあります。
特に、実際にターゲット顧客に近い属性の社員にテストしてもらうと、購入までの導線に迷いがないかといった使い勝手の面まで確認できます。
テストの記録は、スクリーンショットや操作手順とあわせて残しておくと、制作会社への不具合報告がスムーズになり、修正の往復回数を大きく減らせます。
受け入れ基準を事前に決めておく
何をもって「完成」とするかの基準が曖昧だと、受け入れテストの段階で認識のズレが表面化しやすくなります。
契約時点で、受け入れ基準(要件定義書の各項目が満たされていること)を明文化しておくと、公開判断がスムーズになります。
軽微な不具合まですべて解消してから公開しようとすると、公開日が際限なく後ろ倒しになりがちです。「公開をブロックする重大な不具合」と「公開後に順次対応する軽微な不具合」を切り分ける基準を、あらかじめ制作会社と合意しておくことをおすすめします。
ECサイト新規構築の進め方に関するよくある質問
要件の整理から公開前の受け入れ確認まで、発注者側で判断に迷いやすい点をまとめました。
制作会社とのやり取りは誰が担当すべきですか?
特定の担当者を一人窓口として固定し、制作会社とのコミュニケーションを一元化することを強くおすすめします。
複数人がバラバラに制作会社へ要望を伝えると、要件の優先順位が制作会社側で判断できなくなり、混乱の原因になります。
窓口担当者は、社内の関係部署から出てきた要望や懸念を整理し、優先順位をつけたうえで制作会社に伝える役割を担います。
窓口担当者自身がすべての要望に答えられる必要はなく、社内で誰に確認すればよいかを把握していることの方が重要です。
窓口が不在のときに備えて、代理対応できるバックアップ担当者をあらかじめ決めておくと、急な休暇でもプロジェクトが止まりません。
追加費用が発生しそうな場合、どう対応すればよいですか?
要件定義書からの変更が発生した時点で、追加費用と納期への影響を見積もってもらい、社内で承認を得てから進めるのが基本です。
「後で精算すればいい」という進め方は、後々の認識齟齬やトラブルの原因になりやすいため、都度確認しながら進めることをおすすめします。
追加費用が発生しやすいのは、当初想定していなかった外部システム連携や、デザインの大幅な変更などです。
要件定義の段階でこうした要素をできるだけ具体化しておくことが、後からの追加費用そのものを減らす一番の対策になります。
予算に余裕を持たせて、想定外の追加費用にも対応できる予備費を確保しておくことも、プロジェクトを円滑に進めるための現実的な工夫の一つと言えるでしょう。
進捗が遅れている場合、どう対応すればよいですか?
遅延が判明した時点で、原因と今後の見通しを制作会社に確認し、公開日を守れるかどうかを早めに判断することが重要です。
必要であれば、公開する機能の範囲を絞り込んで一部後回しにするなど、柔軟にスコープを調整することも選択肢の一つです。
遅延の原因が発注者側の対応遅れにある場合は、まず自社の体制を見直すことが先決です。
原因が制作会社側にある場合は、人員体制の増強や、優先度の低いタスクの後回しなど、具体的な対応策を一緒に検討してもらいましょう。
遅延を一方的に責めるのではなく、双方が納得できる解決策を一緒に探る姿勢が、プロジェクトを前に進める近道です。
なお、遅延理由が正当なものであっても、公開日の変更は関係部署への周知や、広告出稿のスケジュールなど、社外への影響も伴います。決定した際は速やかに関係者へ共有しましょう。
まとめ:発注後も発注者としての役割を果たす
ECサイトの新規構築プロジェクトは、制作会社に任せきりにするのではなく、要件定義書の確定、WBSでのスケジュール管理、定例での進捗確認、受け入れテストという4つの型を発注者側も担うことで、着実に公開までたどり着けます。
発注者としての役割を果たすことが、結果的にプロジェクト全体の成功確率を高めます。
制作会社との関係は、単なる発注者と受注者ではなく、同じゴールを目指すパートナーとして捉えることで、コミュニケーションの質も自然と高まります。
疑問や懸念があれば遠慮せずに早めに共有し、一緒にプロジェクトを作り上げていく姿勢を持つことが、良い結果につながります。
ECサイトの新規構築や、プロジェクトの進め方について相談したい場合は、気軽にお問い合わせください。
要件定義書の作成支援や、WBSを用いたスケジュール管理も含めて伴走することが可能です。初めてのプロジェクトでご不安な場合も、ぜひお気軽にご相談ください。
まずは要件定義書の内容を、社内でしっかりと一度整理することから始めてみてください。
発注前の要件定義がしっかりしているほど、その後のプロジェクトは驚くほどスムーズに進みます。時間をかけてでも、丁寧に固めていく価値のある大切な工程です。




